第一話 幻月
第二話 さらなる<偶然性>と見えていなかった<必然性>
第三話 ちょっぴり早い、クリスマスイブ ―深紅のバラ―
第四話 雪化粧
第五話 お帰りやす
第六話 生演奏
第七話 You Can Do Magic
第八話 Last Train
第九話 美しく流れるメロディライン
第十話 結婚するって本当ですか?
第十一話 Antonym『アントニム』
第十二話 魑魅魍魎
第十三話 俯瞰
第十四話 陶酔
第十五話 ダブル・・・
第十六話 Survive(生き抜く)
第十七話 絶体絶命
第十八話 Out Of Control & Take My Breath Awa
第十九話 I Cannot Die
第二十話 乱高下
第二十一話 STORIES
第二十二話 Brain Jack
第二十三話 人間らしさ…Into the Conflict
第二十四話 影
第二十五話 Lock On
第二十六話 黒子という名の主役
第二十七話 Stay Cool SpecialのBackyard
第二十八話 再び蘇る
第二十九話 風鈴
今から8年前、2017年スペインバルセロナ。
街の中心に十万人近く観客を収容できるカンプノウ・スタジアムがある。
試合開始二時間前に開門。
その時点でスタジアム入口辺りは人で溢れかえり大混雑。
世界最高峰のサッカーのクラシコ。
バルセロナvsレアルマドリード。
今では二度と観る事のできない、メッシ、クリスチアーノ・ロナウド、シャビなどの全盛期最後の競演。
2018年ヴィッセル神戸にやって来る、イエニスタもそこにいた。
ヴィッセル神戸のオーナー兼楽天○▲社長やヴィッセル神戸スタッフの姿をホテルロビーで見かけた。今から思えば、彼らは、イエニスタ獲得交渉のために、はるばる日本からバルセロナに来ていたのかもしれない?
普通、主役はひとりか二人で十分…脇役の汗かき役は欠かせない…黒子役も絶対不可欠。
偶然、<黒子>という表に出てこない人たちが視界の中に混じっていた。
サッカーの審判は、ユニフォームは黒。
正真正銘の黒子役。
ミスジャッジをすれば、SNSでやり玉。適切なレフリーをして当然とみなされるから、減点方式の世界で生きている。フォワードは決定機10回中9回はずしても、1回決め、1vs0で勝てばヒーローになれる。
選手の一試合の走行距離は10km前後。審判もほぼ同じくらい走らないといけない
カンプノウ・スタジアムの指定席から席を外し、スタジアムの階段を下り、ピッチの眺めがよりいいポジションに移動した。
試合が始まれば、当然して指定席に戻らないといけないが、開始前であれば、最前列付近まで移動可能。
まもなく選手が次から次へ現れ、最高級のレベルの練習を始める。
練習で100回中100回成功しても、本番の試合では成功しないこともある。
全然緊張しているように見えない選手たちは、笑みを浮かべながら信じられないプレーを練習時から見せてくれる。
それに以上に驚かされたのが、黒子役の三人の審判の動き。
三人の審判もグランドに現れて、軽いウオームアップをした後、軽いダッシュを始めた。
審判のダッシュは徐々に勢いを増し、世界的に有名な選手の動きと大差ないレベルに近づいていく。
黒子役という影に隠れた存在であり、滅多に表に出ない、試合前の練習風景に眼を奪われた。
試合中に審判の動きに注目している人は皆無。
彼らの動きはいつでも見ることができるが…ほとんどの人は試合を観に来ている。審判の動きに注意を向ける人はいない。
が、視点を変えて、脇役や黒子役の頑張り具合を眺めるのも一興。
誰も見ていないようで見ていることが、世の中には多い。
例えば、ある頑張り具合を観ていて、その人をヘッドハンティングするに至ったという話はよくある話。
主役が脇役や黒子役に落とされることがある。
サッカー、野球などのスポーツを例に取れば、非常にわかりやすい。
絶対的な主役がレギュラーから外されたとき、腐らずにいつでもスタンバイOKの準備を怠っていないかどうか?を指揮官は秘かにじっと観察している。
レギュラーが主役の座を外されたときに、その人の真価が問われる。
逆に脇役や黒子役が主役になることもある。
長嶋茂雄さんが現役時代。
大昔の巨人九連覇ではON、王選手と長嶋選手の両輪が主役。
王選手が打てないときは、長嶋選手が大活躍。
長嶋選手が打てないときは、王選手が打つ。
完璧にONの二人を封じ込んでも、今度はON前後を打つ脇役や黒子役の出番。
ON封じに神経をすり減らし、脇役や黒子役が主役の大役を担う。
その当時の阪神タイガースの江夏投手が、自慢の剛速球で王選手や長嶋選手を完全に抑えても、二人の主役の<脇を固める黒子役>に足元を救われる。
だからこそ、当時の巨人は桁外れに強かった…本当の強さの理由のひとつ。
代替えが利く<脇を固める黒子役>の存在。
主役が活躍しなくてもその代役を担うことができる、本物の黒子役がいるかいないかの違いがとても大きな差。
昨今のサッカー日本代表も信じ難いほど強くなった…本物の主力と控え組の区別がつかない。
○×病院の人事を、横から眺めているととても興味深い。
そのトップが定年退職する数カ月前。
次のトップの人事は、表向きは決まっていない…水面下の勝負。
トキを図ったように、そのトップの人は、脇を固め始めた。
おそらく予定通り。
自分の意思を継いでくれる、現在のスタッフに加えて、脇を固める黒子役を、自分の後釜が決まる前に、次々と組閣入りさせた。
そのトップを外部から狙おうとする人たちへの無言の圧力。
「ここには入って来れない…入って来るなら来てもいいですが」
外部から舞い降りてくる落下傘の発動を諦めさせる。
しかも、噛ませ犬まで用意して防御する。
二重、三重にもロックをかける…事前の万全の準備を怠らない。
その人は無事定年退官して、次の世代へバトンタッチ。
素人の私が見ても、人事が絡む世界では、トップが決まってから、組閣づくりの駆け引きが行われる。
もしかしたら数年前、それ以上に遡ると、その流れが腑に落ちる。
議論が少ない日本人ならではの人事…議論して激しく闘う欧米諸国とは異なる。
<脇役や黒子という名の主役>に関する話題は事欠かない。
神輿に担がれた主役よりも、誰も見ていないところで地道な努力を繰り返している脇役に眼を向けるのも楽しい。