南青山アンティーク通りクリニック

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第三十八話 黄昏

令和八年四月二十五日(土曜日)


プロペラ機

 四半世紀以上、四半世紀未満。
 プロペラ機で空を駆けていた頃。
 羽田空港からわずか一時間のフライト。

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張りつめていたもの

 滑走路付近には、今は滅多に見ることのないタラップ車が目に留まる。
 そのタラップに足を載せた時、
身体中の張りつめていたものが、ほぐれ始めた。

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金属の感触が、靴底から伝わる。
一段降りるごとに、身体の力が抜けていく。
 地上をしっかりと踏みしめた時、すべてが解き放たれる。

 適当な言葉が見つからない。

 そのとき初めて気づく。

 それは、どこから来ていたのかわからない。
 身体の奥底に隠れていたのか、全然気が付かなかった。
 懐かしい空気の流れ、匂い、湿り気がわずかに感じ取れる。
 今感じたと思った黄昏の感覚は、肌を優しく撫でる。
 ほんの一瞬。

夕暮れ

 山間に沈みつつある夕暮れが、微笑みかけてくる。  ようこそとつぶやきながら。 が、その言葉が、微風に乗って消え去る。

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再び

 数日後、再び張りつめた世界に戻る。  その頃には、今見ている黄昏は、しばらくの間、意識の外側に姿を隠す。  けれど、あのときの感覚だけは残っている。  喧騒の中では、なかなか経験できない。
 慌ただしく過ぎ去る時間…それだけに今はとても貴重な瞬間。

波紋

 近くに小さなため池があった。
 小石を一つ落とすと、静かな弧だけが広がっていった。

夕暮れどきの残光に照らされて、水面の小さな波紋が藍色を帯びていった。
せつなさだけが、静かに心に残った。

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