

第一話 幻月
第二話 さらなる<偶然性>と見えていなかった<必然性>
第三話 ちょっぴり早い、クリスマスイブ ―深紅のバラ―
第四話 雪化粧
第五話 お帰りやす
第六話 生演奏
第七話 You Can Do Magic
第八話 Last Train
第九話 美しく流れるメロディライン
第十話 結婚するって本当ですか?
第十一話 Antonym『アントニム』
第十二話 魑魅魍魎
第十三話 俯瞰
第十四話 陶酔
第十五話 ダブル・・・
第十六話 Survive(生き抜く)
第十七話 絶体絶命
第十八話 Out Of Control & Take My Breath Awa
第十九話 I Cannot Die
第二十話 乱高下
第二十一話 STORIES
第二十二話 Brain Jack
第二十三話 人間らしさ…Into the Conflict
第二十四話 影
第二十五話 Lock On
第二十六話 黒子という名の主役
第二十七話 Stay Cool SpecialのBackyard
第二十八話 再び蘇る
第二十九話 風鈴
第三十話 喪失が教えてくれるもの
第三十一話 Don't Miss It
第三十二話 MERRY CHRISTMAS
第三十三話 年賀状じまい
第三十四話 余白
第三十五話 SAKURA
第三十六話 布石
人はときどき、<運>という言葉を口にする。意味を求めず、ただ空気のように。
本物の<運>は、言葉よりも静かだ。
気づかぬうちに近づき、ふとした瞬間にだけ、その影を落とす。
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だが、本物の<運>は、そんな軽い言葉の衣をまとって現れはしない。
人生のどこかで、ふと風向きが変わる瞬間。
そのとき初めて、人は自分の歩いてきた道の“布石”を思い出す。
私の身近には、十年先、二十年先を見越して、静かに種を置く人がいる。芽が出るまで待ち、花が咲くまで待ち、散るまで見届ける人だ。その忍耐は、運を呼び込むための、ほとんど祈りに近い所作である。
人生は囲碁に似ている。
序盤の一手が、中終盤の窮地を決める。
布石を怠れば、どれほど読みを尽くしても、盤面は静かに敗北へ傾いていく。
布石の意味は、布石を置いたときには分からない。

種をまかずに、運だけが訪れることは少ない。
結果とは、長い時間をかけて育つ影のようなもの。
思いがけない出会いが、静かに扉を開けることもある。
そのとき、人は気づく。あれは偶然ではなく、自分が知らぬ間に置いてきた“布石”の延長線上にあったものである。

人が持つ美しさもまた、運という言葉で片付けることはできない。
長い年月の中で育まれた“流れ”の上にある。
誰の人生にも、その人だけの布石が、静かに息づいている。

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