

第一話 幻月
第二話 さらなる<偶然性>と見えていなかった<必然性>
第三話 ちょっぴり早い、クリスマスイブ ―深紅のバラ―
第四話 雪化粧
第五話 お帰りやす
第六話 生演奏
第七話 You Can Do Magic
第八話 Last Train
第九話 美しく流れるメロディライン
第十話 結婚するって本当ですか?
第十一話 Antonym『アントニム』
第十二話 魑魅魍魎
第十三話 俯瞰
第十四話 陶酔
第十五話 ダブル・・・
第十六話 Survive(生き抜く)
第十七話 絶体絶命
第十八話 Out Of Control & Take My Breath Awa
第十九話 I Cannot Die
第二十話 乱高下
第二十一話 STORIES
第二十二話 Brain Jack
第二十三話 人間らしさ…Into the Conflict
第二十四話 影
第二十五話 Lock On
第二十六話 黒子という名の主役
第二十七話 Stay Cool SpecialのBackyard
第二十八話 再び蘇る
第二十九話 風鈴
第三十話 喪失が教えてくれるもの
第三十一話 Don't Miss It
第三十二話 MERRY CHRISTMAS
第三十三話 年賀状じまい
第三十四話 余白
第三十五話 SAKURA
第三十六話 布石
第三十七話 獅子落とし
第三十八話 黄昏
第三十九話 物語
第四十話 言葉になる前の無意識
第四十一話 檻と見えない首輪
第四十二話 構造
第四十三話 Narrative
その日、ひとりのクライアントの沈黙が、私の中で小さな波紋をつくった。
そして、言葉にならない気配が、ふと、私の胸の奥に触れた。
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フィクション作家と話をしていると、
彼らの作品の根底には、誰かの実話がうごめいていることに気づく。
その“誰か”は、決して表舞台には登場しない。
だが、作家はそこから構造を借りてくる。
彼らは、ときに──いや、絶えず──その“核”を探している。
目の動きや、話しぶりを見れば、すぐにわかる。
実話の影がまったくなく、創造だけで世界をすべて書き尽くすことができたとしても、
その道のプロから見れば、それは“嘘の世界”だと見抜かれてしまう。
ゼロから物を作ることが、いかに大変で、いかに難しいかを教えられる。
私は、毎日クライアントを朝から晩まで見ている。
ときにドラマのような瞬間もある。
作家からすれば、精神科医は“宝物”を持っているのだと言う。
その言葉を聞いたとき、私ははじめて気づいた。
何十年も見てきたクライアントの人生の軌跡は、
別の人からすれば、宝物に見えるのだと。
それは Story でも、物語でもない。
もしそう呼ぶなら、私の主観や視点が入り込み、現在進行形で、結末の見えないまま流れ続ける、“感性の構造”としての Narrative だ。

クライアントの五十人に数人は、私を刺激する。
言葉の化学反応を引き起こしてくれる。
その反応を感じ取れたとき、それは Narrative へと変わることがある。
その断片の正体が、宝物。
いや私には、誰にも触れられたことのない、静かな核だった。
私は、物語を作らない。
ただ、流れの手前にある気配を、そっと見つめている。
私は断片そのものよりも、
断片になる直前の無意識の影、
気配のようなものを眺めている。
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